『ネバーランド ☆ A GO GO!』 <TOON BULLETS!>

 作・演出の浅沼晋太郎は怖がりと同じくらい驚かせたがりで、物語を作る行為が人に驚きを与えるという点で、自分にはうってつけの遊びであると語っていますが、『ネバーランド ☆ A GO GO!』を観て彼の言葉には間違いはないと感じました。

 彼は物語を楽しんで作っています。

 だから物語が弾んでいます。

 登場させる人物の相関関係にしても、演出の上でも、そこにいろんな仕掛けや伏線を施して遊んでいるのです。結果『ネバーランド ☆ A GO GO!』は良質のエンターテイメントとして観客に提供されました。

 ある山荘にやって来るテレビ撮影のクルー達。その中のディレクターが仕事の合間に語る、その山荘にまつわる過去の忌まわしい出来事。―――場面は一転、そのディレクターの話す世界へ。それは15年ぶりに再びこの山荘に集った13人の男女の物語。

 彼らは15年前に予備校の夏季合宿をこの山荘で過ごし、誰にも口外できない体験を共有したのだった。

 物語は、現在(撮影クルーの場)と過去(13人の男女の場)の二元式に進行していくのですが、この両場面の構成が自然で見事です。13人の男女は何故、再びこの山荘に集まったのか。その謎も徐々に解き明かされ、彼らが15年前におこした出来事(塾長殺し)も再現されていきます。

 そして、次々とおこる殺人。

 13人の人間は一人、また一人と減っていく。

 13人のうち、一体誰が殺人者で、彼あるいは彼女は何が目的で人を殺すのか。

 『そして、誰もいなくなった』を引き合いに出すまでもなく、浅沼氏はサスペンスホラーの定石を踏んでいます。定石は逆に陳腐なものに陥る危険性をも孕んでいるのですが、この作品がそうなっていないのは先に述べた構成・演出の見事さと共に、登場人物のキャラクター設定が緻密でそれぞれが非常に個性豊かな事が挙げられるでしょう。観客は“身近にいるよこんな奴”と、登場人物に親近感や反感を抱きつつ、益々舞台上のホラーゲームに引き込まれていくというわけです。これはもう、役をしっかり演じ切った役者さん達に拍手です。

 劇中では、登場人物が自分の本名を知られない手だてとして、ディズニーのキャラクターの名前を使ってお互いを呼んでいます。

 “殺人”とか“血の惨劇”とか、そういった世界と対極に位置するディズニーワールドをこの作品に持って来たのは、ホラー度を際立たせる上で効果的だと思いましたし、大団円への伏線ともなっています。

 また、B級ホラー映画ファンの私としては、殺人者が白い仮面に黒装束、握ったナイフをふりかぶって―というスタイルで、随所で暗がりから「ワッ!」「ワッ!!」と飛び出して来るのは非常に嬉しかったし、謎かけや殺人予告をパソコンのメールを使ってするというのもスマートなやり方だと思いました。

 浅沼氏は最後の最後まで、真犯人が誰かわからないように巧妙に物語を作っています。そして、最後の最後まで客を驚かせることも忘れていません。そういったサービス精神こそ、プロの仕事であると私は思うのです。

<TOON BULLETS 『ネバーランド ☆ A GO GO』>                          
公演日時:2004年3月23日〜3月28日 新宿SPACE107にて                      
作・演出:浅沼晋太郎

○次回予告○                                            
TOON BULLETS! 4th SHOT 『シーサイド・スーサイド seaside-suicide』                
2004年6月2日(水)〜6月6日(日) 天王洲アイル スフィアメックスにて               
浅沼晋太郎の新作。海にほど近い劇場にふさわしいシチュエーションコメディ。

 

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