『ガノン』<ニューアンサー>

 作・演出が、CX「世にも奇妙な物語」を数作手掛けている大野敏哉ということに心が動き、中野のザ・ポケットへ観に行く。

 作家は既に世に出ており、その人気も手伝ってか、場内は満員だった。

 話は11人の男女が理由も分からず、ある空間に監禁されているところから始まる。そこは食料も充分で、何不自由なく
生活できる環境Lが整えられている。望むなら畑で野菜さえつくれる。ー居心地の良い監禁。

 しかし、窓の外には恐ろしく高い壁がそびえており、容易にそこから外へ出ることができない。

 要はここからなのだ。以上のような状況設定は、誰でも思い付くありきたりと言ってしまっても良いと思う。

 つまり、その劇的スタンダードな状況をどう作者なりに描いていくか?
どういう風な人間関係を紡いでいくか。どういう世界をつくっていくかが勝負なのだ。

 その意味で、作者大野のつくる世界には、ニュートラルな日常感覚から、どんどん迷宮へと向かっていく
「世にも奇妙な」テイストが充満している。

 11人はその閉じ込められた空間で、各自が内心に動揺や焦燥感、そして絶望を感じつつも、表面上はごく普通に
その状況を受け入れ、生活しているように見える。そこでの生活描写は、大学のサークルの合宿ともとれるほどのノリである。

 監禁されても人間は生きて行かなければならない。
 状況に適応できなければ死ぬしかない。
 だから「普通に」生きるしかないのだ。

 11人の男女は冗談を言う。人の悪口を言う。酒を飲む。菓子を食べ、泣き、笑い、ボールなしの野球ゲームをする。
そして、野菜をつくる者達がいれば、一人で引きこもる奴もいる。

 彼等の日々の積み重ねのスケッチは「普通」でおもしろい。

 作家・大野の率いる「ニューアンサー」という劇団は、「ニュアンス=微妙な違い」のためのワークショップを
ひらいているそうだが、舞台上の役者の演技は、その仕事の延長戦上のものなのかと感じさせる。

 さらに役者達の「ことば」「間」「笑い」等々はアドリブかと思わせる箇所も多々あり、演出上そういうシーンも
多かったと思われるが、一部、役者のテンションが高くなり過ぎて抑制がきかず、きっちり芝居をしている部分との
バランスが悪くなったりしているが、これは課題であろう。

 物語はやがて急展開し、脱出不可能と思えたものが、実は11人のうち1人を殺せば壁が開くことが判明する。
そして、それが何者かによって行われているゲームであることも・・・。

 ここで11人は運命を分かつ。1人の生け贄となった男と、1人の殺人者となった男。
そして混乱に乗じてなだれを打つように脱出する7人と殺人者を見て逃げることを放棄した2人だ。

 だが、脱出した者達が見たのは細菌戦争によって崩壊した世界だった。やがて彼等はまた、もといた場所に舞い戻っていく。
その時彼等の記憶は消去されている。そして逃げなかった2人に管理されつつ、再びゲームが始まるのだった。
・・・と、まぁかなり毒のあるつくりとなっている。

 役者達は大野のところの「ニューアンサー」そして「渡辺エンターテイメント」「サイドステージ」「無名塾」
「東京乾電池」の若手俳優達による混成チームだったが、大野はそれぞれの個性を生かし、エンターテイメントとして
よくまとめ上げた2時間半だった。

 彼の今後の活動に注目していきたい。

<ニューアンサー『ガノン』>
公演日時:2003年9月3日〜7日 中野ザ・ポケットにて
作・演出:大野 敏哉

<戻る>