『博多湾岸台風小僧』 劇団桟敷童子

 この劇団、普段はテント公演で、今回初の劇場公演の様です。小屋は下北沢スズナリで客入れの時、決して広くないキャパの為観客整理
は欠かせないのですが、劇団員の元気のいい掛け声は、まるで繁盛しているラーメン店の店員の様でした。
 作・演出の東憲司氏は、今回自分の生まれ故郷、博多の話を書こうと思ったそうです。それは彼が両親や祖母から聞いたり、人づてや
郷土史で知ったりしたことをベースに彼が育った博多の原風景を付け加え創作した架空の“いつかどこかの博多の外れ”のお話です。
 東氏は新藤兼人監督の「どぶ」という映画が好きだそうですが、この作品にも映画に出てきた様な個性的なキャラクターを多数配したか
ったようです。登場するのは「ガダロウ」ー河童が語源ですが、川のごみを拾ったりする河原者達やその元締めです。
彼らは死に花、毒花ともいわれる彼岸花が多数咲いている墓陰長屋〔はかげながや〕に住んでいます。
社会の底辺で生きている彼らは、その日その日をたくましく、したたかに生きる反面、現在の境遇からは到底抜け出せないだろうという
絶望感に支配されています。そんな中で、雑魚部倉雄という一人の男だけが、アイスキャンディ屋になる夢を持っています。
ある日、そのガダロウ達のヤサに、マッチ工場から逃げ出した女工達が駆け込んできます。彼女達を追ってやって来るのは「戻し屋」と  
呼ばれる工場に雇われて脱走女工を連れ戻す男達です。女工達は捕まれば半殺しの目に遭います。
 貧困。農村の口減らしの為に女工になる。最悪の労働条件。せっかん。まるで「ああ、野麦峠」の世界です。
その女工達を雑魚部が匿ってやったことから、彼の、そしてガダロウ達の運命は大きく変わっていくというお話なのですが、作者のガダ
ロウ達へのまなざしは どこまでもあたたかく、最後に不慮の死を遂げてしまう雑魚部への鎮魂として舞う彼岸花の赤々とした色は、
しっかりと観客の目に焼きついた様に思います。  〔2005年7月18日・月 観劇  ザ・スズナリ〕

○劇団 桟敷童子    作・演出  東憲司    〒160−0023 新宿区西新宿6−26−6−B01
    
    TEL/03−3345−7616  FAX/03−3223−7835
 
○次回作『風来坊雷神屋敷』
      
    北区飛鳥山公園内 特設天幕会場  2005年10月15日〔土〕〜10月30日〔日〕          

 

<戻る>