『池田屋チェックイン』<Playing unit 4989>

 浅沼晋太郎という若者は、この企画を始めて数多くの舞台を観てきた中で、私がいいなと思った作品を生み出す作家の一人です。
 彼は“TOON BULLETS!”という劇団を率いて非常にエンターテイメント性の高い作品を毎回発表し続けています。

 今回観た『池田屋チェックイン』という舞台は、プロデュース公演で、浅沼氏の脚本によるものです。
 内容は、幕末の群集劇で、池田屋騒動という、新撰組が池田屋に集まった勤王の志士を襲撃した事件をモチーフに描いた血の雨の降らない幕末青春グラフィティー的、シチュエーションコメディといったら良いでしょうか。
 
 このお芝居に出てくる歴史上の人物、桂小五郎も坂本龍馬もその他の著名な志士も、そして新撰組のコワモテの面々も、皆、等身大の若者として描かれており、誰もが現代の我々が共感できるキャラクタ―設定で、それを役者陣が実に楽しくノビノビと演じ切るという、明るくハジけた舞台だったというのが全体的な印象です。
 実際の池田屋事件では、肥後の宮部鼎蔵、長州の吉田稔磨ら20余名の尊王攘夷の志士がそこへ乗り込んだ近藤勇、沖田総司、藤堂平助、永倉新八らによって、切られたり捕縛されたりしたのですが、この物語はそんな歴史上の事実など、気持ちのいいくらいに一切無視しています。そして、登場人物の誰もが子供のように無邪気で、遊び心一杯で心やさしくふるまうのです。

 歴史上の名前を冠された役者達は、ある程度その名の人物らしく演じる部分もありますが、それはこの劇においてはあくまでもフリです。すなわち、現代的な言葉のニュアンスや笑いを増幅させる為の、より効果ならしめる為の前フリとしてのビッグネームに過ぎないのです。
 それは人物の問題だけでなく芝居の構造的にも、池田屋という歴史上の空間から想像した虚構としての池田屋という祝祭空間をシアタートラムにつくり出せたこととも、同質なことなのでした。

 浅沼氏は、現代物、時代物、あるいはラブロマンスであれホラーであれ、どのジャンルでも、 彼の描くシチュエーションコメディの娯楽性は高いです。
 しかし、この分野では三谷幸喜氏がいます。今後いかに三谷氏にもない彼独自の個性をどれだけ強くその作品に反映させていくかが勝負どころとなるでしょう。

 

2005年4月29日観劇

<Playing unit 4989『池田屋チェックイン』>
公演日時:2005年4月28日〜4月29日 シアタートラム にて
作 :浅沼晋太郎
演出:山崎総司
http://ip.tosp.co.jp/i.asp?i=p_unit4989


○次回予告○
「チェリーホープを知ってるかい」 作:鈴木哲也(MOBO presents)
2005年12月7日(水)〜11日(日) 池袋シアターグリーン小劇場 にて

 

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