『乱暴と待機』<劇団、本谷有希子>

 作・演出の本谷有希子氏は、今、若手売り出し中で将来有望な演劇人と言えるでしょう。自分が女優志望だったこともあって、劇団、本谷有希子を旗上げし、プロデュース公演という形で、その都度俳優を集めてこれまでに9本の芝居を打って来ました。
 また小説も書き、最近では毎週金曜日の深夜1時〜3時ニッポン放送のオールナイトニッポンでパーソナリティもこなすという、まことにマルチなお方です。

 さて、この「乱暴と待機」は男2人女2人の4人芝居です。
 本谷氏によると、主演の馬渕英里何にユニクロのスエットを着せたいという思いから生まれた話だそうですが、シャレではなく本当にそうなのでしょう。
 発想の素は案外そんなところにあるのでしょうし、それを四方八方に展開し、若い人達を引きつける作品に仕上げるところに、彼女の非凡さがあります。

 殺風景な部屋に暮らす男と女。彼らは夫婦でも恋人でもない。男は女に復讐しようとその方法を15年間考えている。女は男に復讐されるのを待って、男と一緒に生活している。
 実際ならあり得ない状況ですが(最近の世相から見て、そうとも言い切れませんが)、きわめて興味のそそられるシチュエーションです。
 何故、男は復讐したいと思うようになったのか。何故、男は屋根裏からたずねて来た男の同僚とセックスする女を見ているのか。そして何故、さっさと復讐しないのか。さらに何故、女はおとなしく男と一緒に暮らし、なおかつ男の世話までしているのか。
 何故だらけですが、劇を観ていると不思議なことに、動機づけや理由などどうでも良くなって来ます。それは男と女の関係から見えてくる、人間としての心理そのものがスリリングで非常におもしろくなってくるからです。
 男が本当に女に対し持っている思い、それは憎しみなのか愛なのか、それとも、そのどちらでもなくもっと別の何かなのか。
 女が男に対して抱いているのは同情なのか、それとも真に自虐的なのか、あるいはひょっとして愛情が芽生えているのではないか。
 そういった想像がこちらの気持ちに絶え間なく去来するのです。
 
 以上の様な事を観客に感じさせてくれる芝居、これを“オモシロイ芝居”と称するのでしょう。
 観客のイマジネーションを刺激し続ける台本と、その世界を増幅させる演出の手法、その両方を合わせ持った本谷有希子は要チェックです。

2005年4月10日観劇

<劇団、本谷有希子『乱暴と待機』>
公演日時:2005年4月8日〜4月17日 新宿シアターモリエール にて
作・演出:本谷有希子
http://www.motoyayukiko.com

○次回予告○
第10回公演「本谷祭り(仮)」
2005年12月 吉祥寺シアター にて

毎週金曜AM1:00〜3:00 『オールナイトニッポン』

 

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