『機械』<ペンギンプルペイルパイルズ>

 このペンギンプルペイルパイルズという劇団を主宰し、作・演出を手がけている倉持裕という人は、最近、岸田戯曲賞を穫ったり、今演劇界で注目される若手作家の一人です。
 彼は従来の演劇の文法にとらわれない創作方法を模索し、常に新しい形に挑み続けています。
 倉持氏は、自分の劇団の活動以外にも、外部から依頼を受けて脚本を書いたりしており、今最もノリにのっている作家といえるでしょう。

 今回「機械」と銘打つ公演には『メッキ仕上げ』と『鏡面仕上げ』の2バージョンあって、私は『メッキ仕上げ』の方を観ました。

 さて、場面はいきなり洞くつです。
 とてつもなく重そうな機械を台車にのせて、やってくる男女。二人とも着ている作業着のようなものはうす汚れています。機械のあまりの重さに台車はこわれ、その場で立ち往生してしまう二人。彼らの言動から、二人はこのとてつもなく重い機械を、この地下から地上へ持っていくことが目的のようです。そこへ現れる風采の上がらない男。その男はこの地下のアパートに住み、今から女房は洞くつの奥の部屋からいつまでたっても出て来ません。男になると化粧が長びいているとのことですが、女房の気配すらありません。
 最後に登場するうす汚れた制服のようなものを着た男は、二人の男女が運ぼうとしている機械を地上に上げた過去があります。どうやら機械を地上に持って行き、ある審査にパスすれば引き替えに一定の富が得られる様なのですが、制服の男は機械を持っていった時、来るべき審査の順番待ちの札をもらいそれを持っていると言います。
 そして、今さらその機械を苦労して地上に持って行っても、この自分さえ何年も審査を待っているのだから、それ以上の時間がかかって徒労に終わるだろうと言うのです。
 
 以上、おわかりのように、この芝居の中で人物の行動の動機に関してそれを説明する様な台詞は全くありません。
 ただ、用途のわからないとてつもなく重そうな機械を中心に、これまたどこに向かうのか不明な人間の存在があるだけです。
 登場人物達は、何かに苦労し、何かに困っており、何かを隠しており、何かを自慢し、何かを期待しています。しかし、その何かが表現されることはありません。すなわち、そのことこそが逆に倉持氏の最大の表現であることを私は感じます。
 過剰な情報や過多な台詞こそ、観客の想像力の翼をもぎ取ってしまうものですが、既にそこに在る舞台上の出来事の目撃こそが観客にとって、最もスリリングで想像のふくらむものであるといったことを倉持氏は良くわかっているからに他ならないと思うのでした。

2005年2月20日観劇

<ペンギンプルペイルパイルズ『機械』>
公演日時:2005年2月17日〜3月6日 下北沢 OFF OFF シアター にて
作・演出:倉持裕

○次回予告○
「センター街」
2005年6月1日(水)〜8日(水) 下北沢 ザ・スズナリ にて
「バリアッチ」
2005年7月10日(日)〜18日(月) 新宿スペースゼロ にて
 

 

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