『から松ン家の兄弟』<劇団阿佐ヶ谷南 南京小僧>

 座付のオリジナリティーのあるなしで、その劇団の評価が分かれると言っても過言ではないと思う。
その意味で、<阿佐ヶ谷南 南京 おつかい小僧>の座付作家で演出をしている代表の飯野邦彦は、オリジナリティーに溢れる力のある作家だと思う。

 『から松ン家の兄弟』は赤塚不二雄の漫画「おそ松君」の六ツ子を中心とした世界と、ロシアの長編小説「カラマーゾフの兄弟」 を題材にした
サスペンス仕立てのコメディだ。

 まず、このゴロ合わせから来たかもしれない着想を、強引にスラップスティックにまとめ上げた飯野の力量に敬服した。

 冒頭の最後の晩餐を思輪競る横一列に並んだ六ツ子の食事のシーンは、つかみとして印象的だ。

 以下、長男おそ松の事件が起こり、三男のから松を中心として話は進行する。
何故?おそ松君は殺されたのか。犯人は誰か?というナゾ解きが始まり、様々な殺害再現シーンや、
おそ松と一松による父親の遺産争い、それに、トト子、アツ子を含めた痴情のもつれなどのシーンも折り込まれていく。

 そして、第一容疑者となった一松の裁判が、おそ松君に出てくる様々なキャラクターたちによって執行されていくのだ。
ここで役者達は裁判官役のイヤミを、弁護士役のでかパン、ダヨーンを、そして検事役のはた坊、チビ太を自由にのびのびと、
そしてラジカルに演じている。

 何せいずれも濃い赤塚ワールドのキャラクターなだけに、演じ切ることが大切なのだが、男優・女優ともそれぞれ個性を出して、
それを全うしているところが小気味良い。

 中でも、するめじゃこぶを演じた中山恒輔はぬるぬるとしたキャラクターをうまく演じていたし、チビ太の代表、飯野も、
そのとっちゃん坊や的容姿を生かしていい味を出していた。

 一方、それらの濃いキャラクター群とは対称的におそ松君を演じた片桐喜芳とから松君を演じた和家の二人のナチュラルな演技は、
この芝居全体のバランスに寄与していた。

 また、この劇団はアンサンブルとしても出演者がよく一つにまとまっており、踊りのシーン一つとっても楽しさが良くこちら側に伝わって来た。

 照明と音の使い方も、テレビのサスペンスものを思わせる効果を出したりして遊んでおり、サービス精神満点だ。
美術もダンボールのタワーを中央、上手、下手に配し、アトランダムに穴というか窓を開け、そこから役者が顔を出したり、
小道具のおでんを出したり、面白い工夫をしている。

 大団円でそれらの穴から一度に同じ顔の六ツ子が出てきた時など、おっ!と思わせる。
その仕掛け自体よりもそれをやる流れの中でのタイミングが面白いのだ。

 総じて脚本の構成も客を飽きさせない作りとなっており、パワフルでエンターテイメント性十分な芝居となっている。

 この劇団は今後も注目していきたい。

<劇団阿佐ヶ谷南 南京小僧『から松ン家の兄弟』>
公演日時:2003年8月27日〜9月2日 阿佐ヶ谷アルシェ
作・演出:飯野 邦彦

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