『プカプカ漂流記』<ハートランド VOL.8>

 以前観た劇団、道学先生の「キネマのジョニー」という芝居がオモシロく、その作者の中島淳彦という人をその時知ったのですが、中島氏はもう一つハートランドという女性ばかりの劇団の座付作家兼演出もやっており、そちらも観てみたいと思っていたのでした。

 で、観たのは「プカプカ漂流記」というお芝居。昔、実際にあった事件というか騒動「イエスの方舟」。中年以上の人なら知っているでしょう。
 この舞台はその「イエスの方舟」を題材にしたフィクションです。もう24,5年も前でしょうか。当時私は大阪で役者修行をしていましたが、工事現場でバイトしていた時、人夫のオッサンが私にこう言いました。「大変な事件やで、イエスの方舟は・・・。」私、笑いそうになったのを覚えています。

 さて、閑話休題。

 当時の「イエスの方舟」に対する世間の風評は、何かいかがわしく怪しい存在で、おいちゃん先生といかいう奴がキリスト教か何か知らんが多くの若い女性をだまくらかしてハーレムの様な集団生活をしている。だから、けしからん・・・、といったものだったように思います。

 「イエスの方舟」のメンバーの中に家出した未成年者がいたこともあり、世論にも押されて当時警察も動いておっちゃん先生が逮捕されましたが、何の事件性もなく、方舟の女性達は世間の白眼視にも耐えキリストの信仰を続けつつ、博多かどっかだったと記憶していますが、皆でクラブを始め結構ハヤっていると聞いたのもかなり昔のことなので、今はどうしているのでしょう、彼女達は。

 このお芝居は、イエスの方舟ならぬ「ドレミの方舟」の女達がおっちゃん先生と一時的に別れ、世間の目から逃れる為に九州の港町へ、支援者の修道女を頼ってやって来るところから始まります。
 彼女達は今はもう営業していないスナックで聖書を学び、歌をうたうという敬虔な日々を送ろうとします。しかし、おっちゃん先生という船長はいません。今後どうやって生きていったらいいのか。メンバーの不安、葛藤、苦悩。
 それは、さながら波間をプカプカ浮かぶ漂流船の様な・・・と、いうわけです。
 結局、彼女達は「イエスの方舟」と同じく、生きていく為に住んでいるスナックで漁師相手に水商売をやろうと決意するところで終わります。

 さて、中島作品には昭和の匂いがあります。劇団道学先生の「キネマのジョニー」も、昭和の映画史の1ページが元になっていましたし、彼のとり扱うものには昭和という時代とその時代を生きた人間への郷愁があります。人間に対する暖かい眼差や愛しさといったものを感じます。かといって、人物像に溺れず、誇張せず、一定の節度をもって描いておられる。しかも軽さや遊び心は忘れない。
 こういった、中島氏の創作に対する構えみたいなものが好きです。

 そして、道学先生の時もそうでしたが、ハートランドの女性達の真摯な演技にも非常に好感が持てました。
 皆さん、それぞれの役を品よく演じておられます。
 また、JCAで教えている箱木さんが、ハートランドのメンバーというのも発見でした。箱木さん、修道女の役スゴク良かったデス。

 これからも、中島氏の作品そして道学先生、今回のハートランド注目デス。

2004年6月6日(日)観劇

<ハートランド VOL.8『プカプカ漂流記』>
公演日時:2004年6月1日〜6月6日 下北沢ザ・スズナリ劇場 にて
作・演出:中島淳彦

○次回予告○
ミニライブ
2004年11月〜12月ごろ 都内某所にて 

第9回公演
2005年6月

 

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