『歌え、牛に踏まれし者ら」 <FICTION VOL.24>

 男好みのする劇団ではないかと思います。といっても、アチラ系という意味じゃなくてこのFICTIONという劇団、チャラチャラしててミーハーで、劇団グッズなどお帰りにいかが?ってなところもなく、つもり客に変に媚びたところもない渋めの集団なのです。

 メンバーは男7人、女1人。

 今回の「歌え、牛に踏まれし者ら」は、役者さんそれぞれの役の個性も実に際立っており、私の率直な印象としては“平成版、小劇場界の新国劇”といったものでした。今はなき新国劇とは芝居そのものはまったく異なりますが、男臭くて渋いということで、そんなワケのわからんフレーズが湧いてきたのでした。

 作・演出は山下澄人氏。30代半ばで富良野塾の出身だそうです。FICTIONは99年旗揚げで、今回の『歌え・・・』はVOL.24ということですから、かなりこの人達場数を踏んでいます。役者全員の息の合い方、演技の練度もそういった経験のたまものなのだろうと推察されます。

 話は、海辺の工場で働いているスネに傷持つ元犯罪者達の人間模様です。この工場は何故かオーナーがアメリカ人で、工場長の号令のもと、日本人の従業員達は毎日アメリカ国歌を歌ったりするヘンテコリンな所です。そして、役のキャラクター設定が実にオモシロく、良いバランスなのです。

 山下氏演じるハスっぱでいい加減でろくでなしで卑屈な工場長。ササと呼ばれるこの男は劇中、こんなことを言ったりします。“卑屈と書いて生きると読むんだ”いい加減な奴のくせに、こういうハハ〜ンと思うような事をシレッと言うわけです。

 あと、ササの友達である犬のジョン。彼は状況を客観的に述べる進行役ですが、なさけない雑種を演じつつも、シニカルなところもありけっこう笑わせます。

 キンと呼ばれる、昔女房の浮気相手とまちがえて全く別人を刺し殺してしまったオッサン。この人、関西弁バリバリでスッパリ気持ちのいい演技で、大阪淀川区とか東大阪あたりの工場で働いてるっぽいおっちゃんのいい味出してました。

 その他、うさん臭そうな元詐欺師、元爆弾魔、犬と同じ名のジョンという黒人のポン引、元ばあさん殺しの少年E、そしてキンというオッサンと元詐欺師と黒人ジョンの共通の恋人である、まかないの女性。この女性もブスったれてるクセに私って罪つくりな女ネ的な発言がすごくオモシロかったです。

 以上のような個性豊かな面々が織りなすドタバタ的人間模様は、人間というものが哀しくもおかしなものであるということを、我々に再認識させてくれるのです。

 山下氏は、自分の芝居のことを“敷居の低い劇”と呼び、“敷居を高く設定しようにも、そのやり方及び能力が著しく欠落している僕たち”と謙遜しておられますが、この言葉プライドの裏返しと私は見ました。理屈や説明や、こけおどしで敷居を高く見せる芝居より、それをできるだけ低くして多くの観客に己が劇空間の住人と成ってもらうことが、いかにムツカシイことか。そういったことを踏まえた上での言葉と感じました。適度な毒と笑いで芝居作りに励むFICTIONの今後は要チェックです。

2004年5月22日(土)観劇

<FICTION VOL.24『歌え、牛に踏まれし者ら』>
公演日時:2004年5月18日〜23日 新宿シアター・トップス にて
作・演出:山下澄人

○次回予告○
FICTION 25『タイトル未定』 
2005年1月 シアター・トップスにて

 

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